Jan.2020

酒と食い物をしこたま抱え、向かったのは手つかずの自然が残る宮崎県大崩山。

Monthly

2020.1.12

editHiromi Ishikawa

Runners

Takakazu Kurose

黒瀬孝和

このRunnersでは、速い記録を出したとか、過酷なレースに出たとかいう、すごいランナーの話ではなく、僕たちと同じように、日々仕事をしながら、ランニングを趣味としている一般ランナーのことを伝えたいと思う。
何がきっかけで走り出したのか、いつ、どんなところを走っているのかなどを、一緒にランニングしながら話しているような、そんな距離感で聞いてみよう。

まずは友人の黒瀬孝和さん(通称:黒さん)の話から。
かなり付き合いも長いのに、そういえば今までのことなんて、断片的にしか知らなかったことに気づく。
改めて聞いてみると、黒さんのこういうところは昔から変わってないんだなぁと思ったり、逆に、走るフィールドがどんどん変化していることに驚いたり。
これまでの彼のランニング人生を俯瞰で見ているかのようで面白かった。

僕と黒さんとの出会いは2018年7月、Happy Hikers BAR(※)というイベントでのこと。
黒さんがトークゲストだった。
ちょうど僕もランニングを始めた頃で、ランナーの話を聞けると楽しみにしていたことを覚えている。
その時は個人的に会話を交わすこともなかったが、数ヶ月が過ぎたある日、知人から九重へ走りに行こうと誘われた。
そこに黒さんも来ていたのだ。それから仲良くなり、以来、いろんなところへ一緒に行っては走り回っている。

※九州のハイカーのためのコミュニティ「Happy Hikers」で行っているイベント。毎回ゲストを呼んでトークをしてもらっている。

「生まれは大阪の高槻なんですが、親も転勤族だったので下関にも住んだし、青春時代までは兵庫県の宝塚に一番長くいました。」

黒さん自身が転勤族で、関東から福岡へも転勤でやってきたということは知っていた。
でも、以前「両親は大分県の中津に住んでいる」と言っていたので、てっきり中津が出身だと思っていた。
ご両親から続く、根っからの転勤族だったのか。
九州に来てまだ数年しか経っていない割に、こちらの友達も多く、色々な場所にも顔を出している。
行動力のある人だと思っていたが、その背景には“新しい土地になじむ力”の強さがあったという訳だ。
なるほど、と腑に落ちた気がした。

旅行+マラソン。

黒さんがランニングを始めたのは35歳の時。きっかけは、よくある「ダイエットのため」だ。

「仕事がずっと忙しくて、いくつもの事業所の立ち上げのために2年くらい家にも帰れず、各地を転々とレオパレス生活していました。
深夜残業も多く食生活も暴飲暴食で、気がついたら体重がけっこう増えていて…。
一番ショックだったのが、数年前に約10年在籍していた事業所に出張で訪れた時。
割と仲の良かったスタッフに『誰でしたっけ?え~黒瀬さん!?ちょっと変わりすぎて…』と、気付いてもらえなかったこと。
これはもう痩せるしかないと(笑)。」

僕も同じく、体重が増え過ぎて3年前にランニングを始めた。
今では太っている姿がイメージできないと言われるが、現在の黒さんからもまったく想像がつかない。

「その頃は川崎に住んでいて、すぐ裏が多摩川だったので、よし、川沿いを走ろう!と思って。
走り始めたのは良いけれど、最初はもう1キロも続けて走れなくて。
それでも、次に走ったら2km行けた。その次は3km。
今度はあの橋まで行って戻ってこよう。それで5kmに。
さらに次の橋まで頑張ってみよう。7km、10km…と、多摩川を使って、どんどん距離を伸ばしていったんです。
その時に走ることが楽しくなってきたので、それじゃあ、マラソン大会を目指してみようかなと。」

すでに出会った当時から、長距離レースを走るバリバリのトレイルランナーだった黒さん。
そんな彼にも、たった2、3kmの距離でゼーハー言っていた時代があったのだ。
多摩川沿いを走り始めてから一年後には、マラソン大会に出られる走力を着実につけていた。

「10kmやハーフのレースを何本か挟んでから、フルマラソンに出ました。
最初のフルマラソンのタイムが4時間20分くらい。
関東ではマラソン大会がたくさん開催されているんですよ。それらに片っ端から出ていました。
最高は4週連続フルマラソン(笑)。
とにかく旅行へも、マラソン大会と繋げて行っていたので…。
観光して大会で走って帰ってくる、みたいなことばかりしていましたね。」

ダイエットから始めたランニングが、もう生活の一部になっている。
黒さんは完全に「トレイルランナー」というイメージだったから、こんなにマラソン歴が長いとは意外だった。

「ただ、タイムは目指そうとも思ったことがなかったんですよ。
サブ4(※)くらいできれば良いかな、程度で。」

※マラソンでは4時間を切ることをSUB4(サブフォー)といい、ひとつの目標となっている。

いつもニコニコしながら走っている彼らしい言葉だと思った。

九州でトレイルランニングと出会う。

そんな黒さんに転機が訪れる。九州への転勤だ。
2016年、42歳の時だった。
彼の両親は大分の中津に住んでいるし、勝手がわからない土地ではない。
しかし、ここで新たなランニングライフを送ろうとした矢先、関東とは異なる環境に出くわす。

「マラソン大会が、九州は少なかったんですよ。しかも、エントリーは抽選だったり。
あまり走れないなぁと思って…。
それなら、トレイルランニングっていうのをやってみようと。
でも、始め方がわからなかったんです。」

トレッキングならば、アウトドアショップで「〇〇山に登ろう」というようなツアーのチラシが手に入る。
専門ショップに行けば、何かしらの情報が得られるかもしれない。
そう考えた黒さんが向かった先は、福岡のランニング専門店「ランザローテ」。

「ハイクみたいに、ショップがやっている練習会みたいなものがないのかなぁと探していたら、秋吉台(山口県)のトレランイベントを見つけたんですよ。」

マラソンからトレランへ。
それは舗装された道から未舗装の山道へと走る場所が変わっただけでなく、「仲間と走る」というスタイルの変化ももたらした。

「ロードだったら一人でも走れるし、自分の好きなように行動できる。
人間関係のしがらみが面倒くさいなという思いもあって、チームには所属せず、マラソンの時はひたすら一人で走っていました。
だけど、やっぱりトレイルは最初のうちは一人では行きづらいんですよね。
行けないことはないけれど、知らない場所はルートを間違えると大変だし、練習会の方が安心できます。」

一人で走る自由も良いが、ことトレイルにおいては仲間と一緒の安心感は大きい。
ケガや滑落、遭難など、山にはいくつもの危険が伴う。
練習会に参加することで、コースに関する不安もなく、時にはエイドなどの補給まであり、安全に走ることができる。

トレランチームの練習会に参加。

九州に来てからトレランを始め、さまざまな練習会に参加していった黒さん。トレイルを走る仲間も徐々に増えていった。
そして、「三日月ファーム(※)」の朝練に参加するようになる。

※福岡県の三日月山~立花山~松尾山~白岳を練習場としているトレランチーム。「ファーム」は「2軍」という意味で、三日月山での朝練で強くなろうという意味が込められている。

「朝練メンバーのブチヲに初めて会ったのが、2018年。熊本の小岱山トレイルレースで。
レース前日に行われたトレラン講座でたまたま知り合ったのですが、その時は連絡先を交換していませんでした。
その後、福岡の福智山で行われる八幡山岳会カントリーレースで再会。『メメちゃんというコーチについて、ART(※)を目指している』と聞きました。
チームのボスであるメメちゃんは、ARTハーフで総合25位という成績を出すほど、けっこう速くて…。
それで、三日月山というところでメメちゃんと朝練をしているから、一緒に行きませんかって誘われて。」

※熊本の阿蘇で開催されるウルトラトレイルレース「Aso Round Trail (阿蘇ラウンドトレイル)」のこと。

転勤当初は福岡に住んでおり、この三日月ファームの毎週土曜の朝練に参加。仲間と切磋琢磨しながら、トレイルでの走力も伸びていった。
1年後に仕事の都合で佐賀県の鳥栖に引っ越してからは、交通の問題などもあって練習に参加する機会が減ったが、今でも仲間との交流は続いている。

三日月ファームのメンバーたちと共に励んだ朝練。(一周10km・累積標高500mD+)

秋吉台のトレイル練習会にて。「まわりも初心者ばかりだったので安心して参加できました」と語る。

黒さんはレースの出場頻度がハンパない。ほぼ毎週、何かしらのレースが入っていたりする。
休むことなく走るのを見て、ケガや故障の心配をするのだが、彼は「予定がないのがもったいない」と言う。
そう聞いて、昔から変わっていないのだなぁと思った。
旅とランニングを合わせて、いろんなところへ行く。
ロードからトレイルになっても、そのスタイルはまったく変わっていないのだ。

次回は、黒さんがステージレースに出会う話。
まさに旅とランニングが一体となった「ステージレース」とは…。

終了時間を夕方5時ということだけ決めて、大濠公園をひたすらグルグル走る、合同自主練「OHORI PARK 100」というイベントをやりました。スタート時間はそれぞれ何kmを何時間で走るかで設定。僕は100km・12時間を目標に5時から走りました。60kmまで順調に行くも、だんだんと疲労により失速。結果は85kmと、またもやウルトラランナーにはなれませんでした。

7trails(セブントレイルズ)
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